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何らかの事情に巻き込まれてしまい、思ってもいない方向に足を踏み外して行く。日常でも決してありえない話じゃない。それでもさすがにこんな男はいないし、こんな男に絡め取られていくやつもいない、はずだけど。
ジョニー・トー監督の「マッド探偵」は、キチガイ元警官バンを軸に展開していく。サイコスリラーとも、アクションとも、コメディともいえない、しかしそのどのカテゴリーとしても十分に納得できるトー・ワールド炸裂の傑作だ。
窃盗犯を追う警官二人が、森の中へ迷い込む。うち一人は、犯人とともに行方不明に。しばらくして連続殺人事件が発生。凶器に使われたのは、消えた警官の銃だった。捜査にあたった刑事・ホー(アンディ・オン)は、人間の内面が見透かすことができる男(ラウ・チンワン)に協力を依頼する。バンはかつて有能な刑事だったが、透視による意味不明な行動が原因で退職させられていた。ホーはともに、犯人の行方を追う。二人は、行方不明になった警官の片割れ・コウ(ラム・ガートン)が怪しいとにらんでいる。バンの目にはコウの中の“7つの人格”が透けて見えていた。若く美しい女、太った大食いの男……次々と現れては消える。それだけではない。自分の離婚した妻が、今も一緒にいると信じるバン。
彼はただのキチガイか、それとも本当に心の中の声が聞こえているのか。最後の最後までわからない、いやきっとどちらも本当なんだろう。思考の迷宮に迷って行くうち、答えがどんどん遠ざかる。殺された人の心を覗く為、林に穴を掘り、自ら土をかぶせるバン。だがそこで見えた答えは本当に事件の真実か。
この作品は、バンの見える世界と現実世界の映像が交互する。そのの緻密な交差のタイミングは、ジョニー・トーと脚本のワイ・カーファイの見事な職人芸が生きている。
キチガイの元刑事が、なんの違和感も無くハマっているラウ・チンワンはやはり類稀なる才能の持ち主だ。恋に不器用な、朴訥としたシングルファーザー、上司の妻と不倫しているセクシーな警官、何をやっても人心をわし掴む。
映画についているカテゴリーは、宣伝以外にはなんの意味も無い事が、この作品を観ると良くわかる。スリラーでもホラーでも、映画は面白ければいい。面白くて可笑しくて、怖ければもっといい。ジョニー・トー監督の映画に対する情熱を、ふんだんに感じることができる1時間30分だ。
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「記憶がないのに、復讐になんの意味がある」人間の本当の幸せは、人を恨む気持ちからではなく、愛する気持ち。深いメッセージを秘めているこの作品は、カンヌ映画際でも評価された。まずフランス、そして世界へ、と狙いを定めたのか。ジョニー・トー監督の新たな挑戦と、大衆受けへの脱皮へと決意が透けて見える。英語、フランス語、広東語を縦横無尽に駆使した意欲作。フランス合作。
マカオのある裕福な一家として暮らす娘の夫、息子二人が何者かに襲撃され惨殺される。フランス人の娘だけは一命は取りとめたものの、重症で話もできない。復習を誓った父親のコステロは、ホテルで三人の暗殺者と出会い、娘一家の復讐を要請する。だがコステロには古傷が原因で記憶障害があった。
カルト的な人気が今でも止まない「ミッション」、最高作品との声が高い「エグザイル」との三部作の位置づけがなされているが、この作品はジョニー・トー国際的な認知を狙っている。アンソニー・ウォン、ラム・シュ、サイモン・ヤム、ラム・カートンなどの、常連を集め、「エグザイル」をほうふつとさせるシーンが多々あり、「ミッション」から続く様式美も健在。映像がとにかく素晴らしく、無国籍に見えるマカオの街を、俳優達の立ち姿を、「エグザイル」以上に魅力的に撮っている。
「エグザイル」は、一部ファンには熱狂的に支持されるものの、女性の観客に受け入れ辛い面もあり、賛否両論の批評を受けた。特に海外での評判は不本意で、いくつかのシーンが現実的ではない、との評価もあった。だが、それらの批判への答えは今作品にある。ストーリーが簡潔でわかりやすく、説明も丁寧だがスピード感はむしろアップしている。行き当たりばったり感が魅力でもあった「エグザイル」だが、今作品では、主人公の行動に韻を含ませ、ラストに繋いだ。ペーソスもあり、これはヨーロッパの観客に喜ばれただろう、と想像できる。言葉にしなくても表情で読む、というアジア的な美徳をこの際捨て置き、世界の観客の目を意識した。
反面ファンサービスも怠らず、トー作品に精通していなければ分からない、ニヤリとするポイントも沢山ある。レストランオーナーであるコステロが、娘の家の冷蔵庫に残った食料でパスタを作り、皆に振舞う。料理を作り、皆で食べるのは多くの作品でも御馴染みのシーンで、ファンなら ふ、と微笑が浮かぶ。
フランスでの人気が高いトー監督は、合作を切望していたと聞く。長らく、同じスタッフを使うことでも有名なトー氏。阿吽の呼吸を自から破り、新境地を開いた。作品のセリフは、大部分で英語が使われており、外国語の映画は苦手な米国人への敷居も低くしている。ハリウッドのリメイクもいいだろうが、ジョニー・トー作品自身が、世界で観れればもっと良い。この作品がそれを叶えてくれるのを、ファンは固唾を呑んで待っている。
ニック・チョンの勢いが止まらない。芸歴20年、テレビ映画と活躍する大ベテランだが、「エグザイル」でようやく世界的に認知された。「証人/The Beast Stalker」で栄えある2009年台湾金馬賞、屆香港電影評論學會大獎の最優秀男優賞、を受賞。この作品では潜入捜査が終了し刑事として戻されたその後の苦悩を、きめ細かく演じている。脇には、フランシス・ン、アンソニー・ウォンの御馴染みエグザイルのメインキャストが終結、少ない出番ながらも強烈な印象を残しているのは、さすが。2006年作品。
海(ニック・チョン)は警察官になってすぐに潜入捜査官に選ばれ、8年間黒社会に身を置いていたが、とうとう捜査対象だったボス ダーク(フランシス・ン)の逮捕にこぎ着ける。晴れて警察に復帰するのだが、長年の潜入生活でギャングの習慣が身に染みつき、官僚的な警察署内の空気に馴染めない。捜査員 龍(アンソニー・ウォン)の市民に対する暴力的な態度にも納得がいかず、不満を募らせる。思い出すのは仲間だった小B(デレック・チャン)や恋人キャット。8年の間の愛や友情をある日を境に捨て去る事など出来ず、苦しむ海。そんな時ダークが監獄内で自殺したと聞かされる。ある日ダークの後釜を狙う新興のボスに、内通者に成らないかと取引を持ちかけられるが。
インファナル・アフェアの世界的な成功で、アンダーカーバー物が香港映画界を席巻し、大量生産される様になって久しいが、この作品はインファナル・アフェアを含めたアンダーカバー物の最終編、とも言える位置づけだ。ほとんど警官としての経験がないまま、長くアンダーカバーに送り込まれ、その間に親友も恋人も当然でき、喜びも苦しみも、ギャングの一員として経験する。身分も行動もすべて壊して、今まで忠誠を誓って命を賭けて守りぬいたものを、裏切れるのか。そんな現実は、他の作品ではあまり描かれて来なかった。そこに焦点を向けた時点で、この作品はこれら一連のインファナル風作品とは一線を描く。
今やハリウッドでも著名となった、アンソニー・ウォンや、名優フランシス・ンに比べると、背も小さく決して目立つ容姿ではないが、それを逆手に取り悲運な男の役が似合う俳優になって来たニック・チョン。立て続けにジョニー・トー作品に出始めた頃から注目され始め、このところ才能が一気に開花したように見える。本作品もまさにはまり役で、2面性を持つ役どころを、髪の色を変えるだけの安っぽい演出では終らせず、台詞ひとつひとつ、表情ひとつひとつリアリティを持たせているから、アンダーカバー時代、警官時代が複雑に入り組む作り方も無理なく見せる。身体全体で哀しみを伝えられる男優で、香港映画界では貴重な存在ではないか。他の俳優ならば本作品の重みが、かなり違った物になっただろう。
フランシス・ンは圧倒的な存在感で、気の良い、愛されるボスを好演している、一方アンソニー・ウォンはそろそろ過度期か。頭文字Dでのだめ親父は良い味を出していたが、相変わらずの刑事役か、マフィアのボス役が多く、本人もそれに飽きてきているのではないかと思わせられた。本作品では最後の場面で彼なりの見せ場を作ったのはさすがだが、市民に理不尽に振る舞う悪玉刑事役に、居心地の悪さが透けて見えたのが残念だ。
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自己紹介:
ニューヨークはチャイナタウンで、最新DVDを仕入れる日々。
ウォン・カーウァイマニア。その他注目しているのは、イー・トンシン、ジョニー・トーらの香港にこだわり続ける監督達。
ウォン・カーウァイマニア。その他注目しているのは、イー・トンシン、ジョニー・トーらの香港にこだわり続ける監督達。
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