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ニューヨークのチャイナタウンは、香港、中国本土、台湾と時差なし。ここでは最新の映画タイトルのDVDが手に入ります。映画情報をいち早くお届けします。
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初めに頭に浮かんだのは、どうしてこのような作品が米国で撮れないのか、という事だ。主人公の育児責任放棄が程度を超えていて、妻が不貞を働く、児童虐待もあり倫理に逸脱しているから、悪影響を心配する保守派の多い米国の映画産業では、ある意味ここまで過激な作品は配給が難しい。
米国でも親がろくでなし、という設定の映画は多くある。しかしこの作品程、芸術性に優れ、しかもリアリスティックな映画に出会えるほど、米国の映画環境は恵まれていない。優れたインディペンデント映画の作品も多くある、だが保守派が権威を持つレイティングに脅える監督達は、行き過ぎがないよう、縛り付けられ、描きたいテーマに手を出せない。
香港、台湾のもっとも権威のある賞に選ぶ映画界の目利きの鋭さ、いい作品であると認め、足を運ぶ観客達。米国に住む我々は、嫉妬する以外無いのか。

タイトルバックでノックアウトされた。ボートがゆっくり進む青い池の映像に、子供の歌う『You are my sunshine 』アジアの独特な湿り気が作り出す色彩の多彩さ。カビの生えたコンクリートの壁、太陽の黄色、街路樹の緑。たった七作の珠玉の作品を残し、数々の監督達に影響を与え、十七年間監督業から遠ざかっていた、パトリック タン 監督の最新作、「父子」は、美し過ぎると同時に大きな痛みを伴う作品だ。ウォン・カーウァイが師と仰ぐ香港ニューウェーブの旗手のタン監督は、この作品で、第43回台湾金馬奨で最優秀作品賞、第26回香港映画金像奨で最優秀監督賞や作品賞、脚本賞など五部門を受賞。第19回東京国際映画祭でも最優秀アジア映画賞と最優秀芸術貢献賞を受賞した。

  食堂で料理人をしている周長勝(アーロン・コック)は、ギャンブル好きが祟って多額の借金を負っている。そんな夫に愛想を尽かした妻の玉蓮(チャーリー・ヤン)は、息子の樂園(ン・キントー)をおいて家を出て行ってしまう。妻に逃げられ途方に暮れた長勝は、仕事もクビになり、樂園は学校へ行くバス代が払えなくなり、電気代さえも払えず止められてしまう。やがて借金取りから逃れるために家を出た長勝と樂園は、隣町の安宿に留まることになる。そこで娼婦の阿芳(ケリー・リン)と知り合った長勝は、彼女の稼ぎを当てにしようと画策するが叶わず、樂園を盗みを働くよう強制するが。

盗難計画の為に忍び込んだ家で、熱を出した子供に語りかける母親の言葉を聞いてしまう樂園「あなたは私の大事な宝物。とても愛しているわ」盗み聞きしているうちに涙が止まらなくなってしまう。どうして僕は母に捨てられてしまったの、どうして僕は愛されないの。無言で伝えるシーンは胸が痛くなる。息子への愛を口にしながら、引き取ろうとしない母親。その母親に会いに家出する息子が戻っていた時、激しく摂関してしまう父親。子供を肉体的、精神的に虐待する親の身勝手さは重いテーマなのに、父親にも、母親の立場にもつい共感させられてしまうのは、力のある脚本とタン監督自身の人格だろう。

英語題が非常にいい、『After This Our Exile』激しい愛ゆえにがんじがらめになってしまうこの父子がExile(追放)の果てに見た物は。
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緑の数字が徐々に上がって行く。その時の高揚感は、株取引をやった事があれば、覚えがあるはずだ。実際には倍の価格に成る事などない。もしそれが可能ならば、悪魔に魂を売ってやる、と思ってしまったのは、誰でも少なからず経験があるのではないだろうか。もし家族が病気でお金がどうしても要るなら、もし目の前にインサイダー取引の情報があったなら。

「インファナルアフェア」シリーズや「傷だらけの男たち」のアラン・マック監督と脚本家フェリックス・チョンが共同監督・脚本に挑んだ金融サスペンスで、この二人が揃うだけでもファンは涎れものだが、ラウ・チンワン、ルイス・クー、ダニエル・ウーが主演、イー・トンシンが制作と来れば、期待値は自ずと上がるというものだ。ちょっと草臥れているが洗練された刑事達が、屋上で香港のビルをバックに話すシーンは、インファナルアフェアを彷彿とさせるが、主演の3人は、古くからのトーシン組。制作者と監督の見事な融合と言うべきか、イーがしっかりと足跡を残しているのも、妙味がある。

 情報科の刑事、梁(ラウ・チンワン)、楊(ルイス・クー)、林(ダニエル・ウー)らは、盗聴器と隠しカメラを使って不正株取引の疑いがある企業・風華國際の社長を監視していた。楊は病気の子どもを抱えているうえに自身もガンで、死ぬ前に家族にまとまった金を残していきたいと思っていた。林は良家の娘との結婚が決まっているが、稼ぎが少ない事を苦にしていた。愛人との会話の盗聴で、翌日に株価が上がることを知った楊と林は、その株を無事買う事が出来たが、あまりにも価格が急激に上昇した為、取引停止になってしまう。事の次第を察した梁は、彼らをかばう為に証拠隠滅に加担し、自らも犯罪を犯してしまうが。

音楽、撮影も素晴らしく、脚本は知的にはらはらさせる。病気の子供を持つ、家族思いの楊を演じるルイス・クーが白髪で老け役を暖かく演じているし、上司の妻と浮気をしているラウ・チンワンもいつもどおりの大人の色気を振りまく。珍しくスターオーラを消している、やせっぽちのダニエル・ウーには、演技派への転身の意思を感じる。盛りだくさんの内容を、きっちりとまとめているのは、監督の技量と俳優達の芝居によるところが大きい。
問題点を挙げるなら、インサイダー取引に対する、知識が少しあやふやではないかと思う点だ。株取引は、銀行口座のように、無記名では出来ないから、刑事達が取引をするのは、そもそも不可能のはず。だが香港映画たるもの、少しくらいご都合主義でなくてはいけない。

中国経済の急成長に合わせて、香港市場も拡大した。金融犯罪ドラマの盛況は必然の成り行きのはず。黒社会映画くらいの盛り上がりを期待したい。



カーチェイス・カーチェイス、全編カーチェイス。ルイス・クーが6歳の女の子の誘拐犯を追う時には、コンクリートで埋め立てられた川を車で疾走する。ヒーローのはずのルイス・クーがこれまた駄目男で、深刻なはずの場面も彼のワーワー言う声に大笑いさせられる。はらはらどきどきしながら、同時に笑う、子供の頃にこんな映画みたよね、と懐かしくもなる。いつかお正月に連れて行ってもらって観た映画の思い出が蘇る。はらはらどきどきのアクションに、やっぱり最後は家族の愛で締める。ベニー・チャン監督の映画への愛が溢れる作品。

 娘を学校に送り届けたあと、突然謎の集団に誘拐されたグレース(バービー・スー)。見知らぬ廃屋に拉致された彼女は、壊れた電話の線をつないで外部との接触を試みる。彼女からの電話を偶然受け取ったのは、しばらく離れて暮らす息子を見送るため空港へ向かっていた阿邦(ルイス・クー)。始めは悪質ないたずらだと思ったいたが、娘を保護するよう頼む彼女の声にただならぬ空気を感じる。警官(ニック・チョン)を見つけるが相手にされず、彼女の娘がいるという学校に一人向かうが。

「新香港警察」のベニー・チャン監督が、ハリウッド映画「セルラー」をリメイク。見知らぬ女性から突然「監禁されている」という電話を受け、電話だけを頼りに彼女を救出しようとするルイス・クー。スタントなしのカーアクションを本人がこなしている。いつもの完全無欠な強い男のイメージはなく、ひ弱で、子供に嘘をついてしまう、どこにでもいるお父さんを演じていて、そのへたれぶりがかわいい。台湾のアイドル女優、バービー・スーも美しい指を震わせながら、泣き叫ぶ、か弱くてつい守ってしまいたくなる母親役を好演。脇のニック・チョンは、さすがの存在感。彼は出番が少なくても、いつも確実に強い印象を残す、素晴らしい俳優。悪役のリウ・イエの無国籍な佇まいと、不気味さも貴重な存在だ。

突っ込みどころは多数。だが頭でっかちにならず、思いっきり笑って、思いっきりはらはらして、鑑賞後は気分がすっきりする、それは本来あるべき姿の映画なのかもしれない。娯楽大作という冠に相応しい一作。







やっと、という言葉は適当でないかもしれない。この作品で、台湾の「金馬奨」香港の「金像奨」に続き、「アジア太平洋映画祭」でも「最優秀主演男優賞」を受賞。「三冠王」として2009年の有終の美を飾ったニック・チョン。スター ニコラス・ツェーを差し置いて主演男優賞での快挙だ。

ほとんどセリフらしいセリフも無く、表情を劇的に変化させるわけでもない。切々と語るのは白く濁っている目と頬の筋肉だけだ。それでも圧倒的な悲哀が伝わってくる。誘拐の報酬で重症の妻を養い、自らの身体をも傷つけながら、感情もなく静かに罪を重ね続けるしか生き残る方法が無く、出口が見えないホンの憂鬱を、鬼気迫る迫力で演じきった。

銀行強盗犯チョン・ヤットンの追跡中に、三叉路で信号無視で突っ込んできた車に、追跡車ごと追突される。その混沌とした現場で、誤って少女を射殺してしまったトン刑事(ニコラス・ツェー)。彼は、事件から数ヶ月たった今でも死んでしまった少女のことばかりを考え、自責の念に囚われていた。チョン・ヤットンの裁判を担当する検察官は、偶然にもトンが死なせてしまった少女の母親アン・コウ(チャン・ジンチュウ)で、初公判を目前にした日、アンのもう一人の娘が誘拐されてしまう。犯人のホン(ニック・チョン)は、チョン・ヤットンの有罪を決定付ける血液サンプルの隠滅をアンに要求してくる。これを知ったトンは単独でホンを追うのだが…。

チャン・ジンチュウの可憐な母親振り、ニコラス・ツェーも動きの切れが良く、ラストには渾身の演技をみせる。健闘しているが、ニック・チョンがあまりにも強烈なので、他の全ての印象が薄くなる程だ。映画自体は良くできてはいるが、ターミネーターの亜流版の作りで退屈に感じる。ラスト10分のホンの回想シーンでやっと辻褄が合い、納得するが。

芸歴20年、長らく日の目を見なかったが、04年ジョニー・トー作品「大事件」で初めて大規模製作での映画の主演を演じた。それ以降も着々と主演を重ね、この作品での数々の受賞は、彼のキャリアを不動の物にするはずだ。

動物的な部分で人に対し嫌悪感を感じる事が誰しもある。まさにニック・チョンはそのレベルまで五感で伝える事が出来る俳優だ。この作品でそれが体感できるだろう。
スター誕生の瞬間をお見逃し無く。



きりきりとひりつくほどの緊張感、ふっと気が緩む場面には、不意を付かれた演出でつい泣かされてまう、脚本の緻密さ、映像の美しさ、俳優陣の抑えた演技が、89分という短い上映時間を一ぶの無駄もない、密度が濃い作品に仕上げている。ソイ・チェン監督作品、ジョニー・トー製作の傑作心理サスペンス。

物語は主人公の妻が巻き込まれた車の死亡事故から始まるのだが、事故は偶然か仕組まれた罠なのかという問いかけが、すでにこの2分のオープニングに組み込まれているのだから、全く気が抜けない。

ルイス・クー演ずる大脳は、3人の仲間を使って事故に見せかける暗殺業をやっている、今までの仕事は、警察には全て事故として処理され、4人とも、まだ逮捕歴が無い。ヤクザの親玉の暗殺を成功させた4人は、ある日車いすに乗っている父親を殺してくれ、と依頼される。彼らは、雨の日の感電死という形で、ターゲットを殺す事を決め、何日も何日も雨のタイミングを待ち続け、ようやく成功させる事が出来た。だがその帰り道、殺し屋の仲間ファッティ(ラム・シュー)がバスに轢かれて死んでしまう。その上、大脳が自宅へ帰ると泥棒に荒らされ、金庫に入れていた今までの暗殺報酬全てが盗まれてしまっていた。大脳は仲間のうちの誰か、もしくは依頼者が裏切っているのではないかと疑い、保険契約員(リーッチー・レン)が怪しいと睨むと、調査のためにアパートの階下を借り住み、盗聴して全ての会話の記録を取り、昼間は会社の向いのビルの屋上から望遠鏡で除き見る生活を送る。今まで周到な用意が奏効して、ミスのない仕事をしてきていた大脳。そのの緻密な完璧主義者ゆえ、常軌を逸してきてしまう。

冷徹さの中に狂気を内包した男、大脳扮するルイス・クーは、影の暗殺者にしては顔が濃すぎ。あんなに背が高い美形が、毎日屋上に居たら目立つでしょう、と突っ込みたくはなるが、どの作品を見てもあまり表情豊かとは言い難い彼、静かに狂っていく男の哀しみを上手く伝えていて、持ち味が良いほうに出でいるよう。脇を支えるリッチー・レンは、どこにでも居る保険屋を、妙に説得力ある、独特の存在感の薄さで表現しいる。

この映画の観るべきところは、脚本。精緻に計算されつくした事故暗殺を、丹念にリアリティをもって描かれている。観客もいつのまにか心理的にじわりじわりと追い詰められ、仕掛けなのか、事故なのか、猜疑心でがんじがらめになる主人公の心情に、見事に嵌められてしまう。

仕掛けだと思い込んでいたが、実は事故だと回答があるのは、一つだけ。監督は、冒頭の事故も、盗難事件も、敢えてどちらかとは明かさず、本人がどう取るかが、真実だ、というメッセージをこめている。
極上の心理サスペンス、香港映画の今を知るには必見の作品。
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HN:
hkny Emi Ueyama
性別:
女性
自己紹介:
ニューヨークはチャイナタウンで、最新DVDを仕入れる日々。
ウォン・カーウァイマニア。その他注目しているのは、イー・トンシン、ジョニー・トーらの香港にこだわり続ける監督達。
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