ニューヨークのチャイナタウンは、香港、中国本土、台湾と時差なし。ここでは最新の映画タイトルのDVDが手に入ります。映画情報をいち早くお届けします。
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きりきりとひりつくほどの緊張感、ふっと気が緩む場面には、不意を付かれた演出でつい泣かされてまう、脚本の緻密さ、映像の美しさ、俳優陣の抑えた演技が、89分という短い上映時間を一ぶの無駄もない、密度が濃い作品に仕上げている。ソイ・チェン監督作品、ジョニー・トー製作の傑作心理サスペンス。
物語は主人公の妻が巻き込まれた車の死亡事故から始まるのだが、事故は偶然か仕組まれた罠なのかという問いかけが、すでにこの2分のオープニングに組み込まれているのだから、全く気が抜けない。
ルイス・クー演ずる大脳は、3人の仲間を使って事故に見せかける暗殺業をやっている、今までの仕事は、警察には全て事故として処理され、4人とも、まだ逮捕歴が無い。ヤクザの親玉の暗殺を成功させた4人は、ある日車いすに乗っている父親を殺してくれ、と依頼される。彼らは、雨の日の感電死という形で、ターゲットを殺す事を決め、何日も何日も雨のタイミングを待ち続け、ようやく成功させる事が出来た。だがその帰り道、殺し屋の仲間ファッティ(ラム・シュー)がバスに轢かれて死んでしまう。その上、大脳が自宅へ帰ると泥棒に荒らされ、金庫に入れていた今までの暗殺報酬全てが盗まれてしまっていた。大脳は仲間のうちの誰か、もしくは依頼者が裏切っているのではないかと疑い、保険契約員(リーッチー・レン)が怪しいと睨むと、調査のためにアパートの階下を借り住み、盗聴して全ての会話の記録を取り、昼間は会社の向いのビルの屋上から望遠鏡で除き見る生活を送る。今まで周到な用意が奏効して、ミスのない仕事をしてきていた大脳。そのの緻密な完璧主義者ゆえ、常軌を逸してきてしまう。
冷徹さの中に狂気を内包した男、大脳扮するルイス・クーは、影の暗殺者にしては顔が濃すぎ。あんなに背が高い美形が、毎日屋上に居たら目立つでしょう、と突っ込みたくはなるが、どの作品を見てもあまり表情豊かとは言い難い彼、静かに狂っていく男の哀しみを上手く伝えていて、持ち味が良いほうに出でいるよう。脇を支えるリッチー・レンは、どこにでも居る保険屋を、妙に説得力ある、独特の存在感の薄さで表現しいる。
この映画の観るべきところは、脚本。精緻に計算されつくした事故暗殺を、丹念にリアリティをもって描かれている。観客もいつのまにか心理的にじわりじわりと追い詰められ、仕掛けなのか、事故なのか、猜疑心でがんじがらめになる主人公の心情に、見事に嵌められてしまう。
仕掛けだと思い込んでいたが、実は事故だと回答があるのは、一つだけ。監督は、冒頭の事故も、盗難事件も、敢えてどちらかとは明かさず、本人がどう取るかが、真実だ、というメッセージをこめている。
極上の心理サスペンス、香港映画の今を知るには必見の作品。
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「さらばわが愛、羅王別姫」でカンヌ国際映画祭、パルムドールを受賞した、チェン・カイコー監督が再び京劇の世界に挑んだ。実在した伝説の女形梅蘭芳の歴史に翻弄された波乱万丈の人生を描く。
中華民国初期。京劇界の大物十三燕(王学[土斤])に師事した梅蘭芳(余少群)は人気の高い女形となっていた。ある晩、外国帰りの高級官僚、邱如白(孫紅雷)の講演を聞きに行くと、旧来の京劇を批判し、俳優は生身の人間を演じるべきという主張に感銘を受けた梅蘭芳は舞台に招待する。彼の美しさに魅了された邱は、地位も家も捨てて梅蘭芳を助けることを決意した。梅蘭芳は人気を増すが、師匠の十三燕はそれを快く思わず、3日間で別々の劇場で上演し、客の入りを競おうと勝負を持ちかける。オリジナルの現代悲劇を演目にすることで、2日連続の勝利を勝ち取る。 20年代後半。名実ともに京劇界のトップ俳優となった梅蘭芳(レオン・ライ)は、邱如白と銀行家の「六爺」(英達)とともに、京劇のアピールのために、ニューヨーク公演を企画していた。そんなある日、梅蘭芳は京劇界トップの男役、孟小冬(チャン・ツィイー)と知り合い、二人の中は急速に接近していく。初めて寂しさを癒す事のできる相手に出会った梅蘭芳、だが役者生命に危機を及ぼすと考えた邱如白は、芝芳と小冬を逢わせて小冬に恋をあきらめさせた。しかし、邱如白は刺客まで雇って小冬を殺すことまでも考える。NY公演は成功裏に終わったが、刺客を雇ったのが邱如白だと梅蘭芳が知ると、2人の仲は急速に冷えてしまう。そして日本が北京を占領した1937年、彼は京劇をやめることを決意し、邱如白とも別れて上海に向かう。
金馬賞に輝いたユィ・シャオチュンがとにかく美しく素晴らしい。前半部分、若年の梅蘭芳を演じたが、妖艶な美しさで、多くの男達を惑わせてしまった、女以上に女らしいと言わしめた、梅蘭芳そのものと思えるほど。後半のレオン・ライが演じた部分は、白塗りの顔に肉が付きすぎで、まるで馬鹿殿様。がっかりさせられてしまう。チャン・ツィイーも平凡。梅蘭芳が始めて生身の人間に恋をする説得力や、引き裂かれる悲惨さはまるで感じられない。中国映画では、ハリウッド級スターを使わないと、興行収入に響く事情は察するもの、前半のユィの華奢で小さな身体が 突然巨人の様に大きくなり、巨人レオンの女形と女性でも細身のチャンが男形、二人で合わせる場面は、つい失笑させられる。無理があるとは本当に誰も思わないのだろうか。中国映画界の人材不足の深刻さを考えさせられてしまう。
邱如白役のスン・ホンレイが数々の助演男優賞に輝いたのは、順当。梅蘭芳の芸を愛するあまり、人生を翻弄されるインテリ中年の邸は、狂人さながらに梅蘭芳の人生をコントロールしようとする。溢れるような情熱が滲み出るような、控えめながら強い信念を持つ男を、印象的に演じている。
日本兵役の安藤正信は中国語までマスターし、力演だとは思うが、日本語の台詞がどうしても滑舌が悪く聞こえる。最近日本の俳優の中華圏作品への出演が相次ぐが、俳優達は外国語の台詞を勉強する前に、まず自国で台詞が言えるようにしてもらいたいものである。
2時間26分の大作で、各時代に沿って微細まで忠実な美術や衣装、京劇のシーンなどは見ごたえあるが、1部のキャスティングの失敗が致命的で、残念な仕上がりだ。
ジョニー・トーの最高傑作、いつまでも名作と歌われるこの作品は、ただただ、かっこいい。男の美学という古臭い言葉がつい口について出てしまいそうな、1999年作品。
ジョニートー作品の常連、サイモン・ヤム(ブン)を筆頭に、フランシス・ン(ロイ)、アンソニー・ウォン(グアイ)、ジャキー・ロイ(シン)、ロイ・チョン(マイク)、ラム・シュー(フェイ)が集結。ボスの命を守り、暗殺者が誰なのかを暴こうと奮闘する。
黒社会のボス、ブンが何者かに命を狙われた。ブンは弟のナンに命じて、護衛のために腕のたつ男たちを集めさせる。集まった5人のうち、ロイとその弟分のシンは現役の構成員だったが、グァイ、フェイ、マイクの3人はすでに足を洗っていた。お互いをプロと認めあう5人は、抜群のチームワークで恩義あるブンを守り抜き、ついに襲撃者とその黒幕をつきとめる。任務を終え、今では固い友情で結ばれた5人。だがナンは、彼らに次なる非情の任務を下すが。
終業間際のジャスコのエスカレーターで、突然何者かが撃って来る。エスカレーターを降りきると、すぐさまフォーメーションを組む5人の動きは抜群で、ひりつくような緊張感の中、5人のシルエットが遠めのショットで映し出される。微妙な光の量で生まれる影、男達の立ち位置も含め、計算されつくしたような映像美は、スタイリッシュでため息が出る。
この映画で初の台湾金馬賞、最優秀主演男優賞を受賞した、フランシス・ンの出来が逸品で、コメディでも、ヤクザの親分役でも、連続殺人者役でも、それなりに説得力のある、安定した演技が定評だが、存在感と立ち姿の美しさは、類のないカリスマ性を垣間見せた。後に当たり役、インファナルアフエアⅡのハウで、世界中に注目されるようになったのは、周知の事実だ。160本近くも出演している大ベテランだが、少しも手を抜く事の無い彼のキャリアに、本作品は花を添えた形になる。
もちろん他の俳優達も素晴らしい。命ぎりぎりながら、友情を育んでいくストーリーを、嫌味なく見せている。
名匠と称されるジョニー・トーは、この作品には脚本を使用せず、役者に状況を説明しただけで、あとはアドリブで自由に演技をさせたらしい。カメラワーク、ポジショニングなど何度もリハーサルを重ねたように完璧で、香港映画の底力を感じるざるを得ない。香港返還後10年のベスト5にも選ばれた。何度も観たくなる名作なのには間違いない。
約10年後に公開されたエクザイルは、後編の位置づけがされていて、互いに銃を向け合うシーンや、紙サッカーなど、多くの場面が微細にコネクトしてあったりするから、ファンにはたまらない。合わせてもう一度続けて観てみるのも、おもしろいだろう。
恋愛を経験していくうちに、感情の微細な波を読む事が出来るようになる。この映画をどう観るかで、どんな恋愛をして来たのか、どれほど真剣だったのかがわかるリトマス試験紙のような、ウォン・カーウァイ監督最高傑作。45分の短編だが、彼のエッセンスが全て詰まり、役者も最高の演技を見せる。ミケランジェロ・アントニオーニ、スティーヴン・ソダバーグ競作オムニバスのうちの一作品。
高級娼婦のホア(コン・リー)は、仕立て屋ジンの大切な顧客。初めて訪れるホアの家で緊張に身を堅くする新米弟子のチャン(チャン・チェン)だが、商売中のホアの喘ぎ声に身体が反応してしまった。呼ばれてホアの寝室に行くと、ズボンを脱ぐように命じるられる。股の間を指で愛撫し、「この感覚を覚えて、美しい服をつくってちょうだい」と命じるホア。その日から一途にホアに思いを寄せるチャン。数年が経ち、売れっ子の仕立て屋と成長したチャンとは対照的に、パトロンにも去られ、仕立て代を滞納するホア、ついに街娼にまで落ちぶれる。病を患いベッドから動けなったホアの家賃を払い続けるチャン。見舞いに来たチャンに「初めて会った時のこと覚えているかしら」と聞くホア。「もうあなたに返せるものは何もないけど、私には唯一手が残っているわ」快楽を与える為に股間をまさぐるホア、チャンは口付けようとするが、病気が移ると手で押し留めたホアの手にチャンの涙が零れる。
中国系若手の中でも傑出した才能の持ち主、とウォン監督が絶賛するチャン・チェンは会心の演技を見せている。もともと肉体のコントロールが上手い俳優だが、初めてホアがチャンに触れ、羞恥心に震えながらやがて快感に身を任せて行く難しいシーンも、唇をふるわせ、額に汗がにじみやがて零れ落ちる、見事な芸当を見せる。仮縫いをするために息が掛かるほど身体を近つけても、一瞥だにしないホアに、やるせなく眉を寄せ思いを目で伝えるその風情は見事だ。街娼に成り下がったホアが、チャンを再び弄るシーンでは、彼女への思いが溢れ、零れる涙を互いの手の甲で拭いあう、そのせつない表情に胸を打たれる。
コン・リーも気高い高級娼婦の妖艶な姿から一転、何もかも失いやつれていく肺病持ちの街娼に落ちても、か弱くも華奢な美しさを失う事が無い。レース使いの身体にぴったりと張り付いたチャイナドレスはあくまで豪奢でいなまめかしく、撮影ではおなじみクリストファー・ドイルが余すことなく、撮り押さえている。
衣装、美術、撮影、全てにおいて一切の妥協の無いのはもちろん、息遣いや、肌、生地の質感、二人の肌の体温まで感じられるほどの卓越した映像に息を飲む。だが一番心に残るのは、二人の美しい表情と、手だ。
「2046」の撮影を一端中断して撮影されたと言うこの作品、同じキャストの二人を使っているが、物語は微妙にリンクしている。「2046」のスー・リーチェン(コン・リー)が何故過去を決して語らないのか、何故黒手袋を外さないのか、答えはこの映画の中にある。
緑の芝山、よく整備された日本庭園、北の海岸、対極中の障子の光、こんなに美しい日本の風景を映した作品は、日本映画でも「殯(もがり)の森」以降無く、たまには映像美を眺めるだけの映画もいいかもしれない。昭和最強の囲碁士の呉清源の一生を描いた、中国の巨匠田荘荘監督による4年振り、2007年公開作品。
北京で天才棋士と呼ばれた少年、呉清源(チャン・チェン)は日本の棋士、瀬越(江本明)の尽力によって母と来日する。彼はその実力で日本囲碁界のトップにまで昇りつめていくが、厳しい勝負の世界の中で次第に深い孤独を感じるようになっていく。後に昭和最強と呼ばれる呉清源は、常識を覆す打ち方を提唱、トーナメントにも勝ち進み、最高段位の名人となる。一方日中戦争が勃発し、二つの祖国で揺れ動く中、新居が空襲で失われ、食料不足の困難に遭う状況で、やがて新興宗教に傾倒して行ってしまう。
この映画は、もう映像と衣装を見るだけの作品で、草木の緑の丘に川端康成と座る呉や、碁盤に碁を打つ指、呉の着ている深みのある鶯色の着物。呉と和子の祝言で交換される赤い糸、色にこだわりつつも完璧な構図の映像は、田監督の日本への愛情が伝わってくる。私達が気付かないような精緻な日本の美を反対に学べるほど。
主演のチャン・チェンは、14歳から60代までの呉を演じている。繊細で物静か、時には息を飲むほど美しく、安定した存在感で挑んでおり、稀代の美青年だった呉清源役は彼しかいない、と田監督にほれ込まれての起用だが、日本語はほとんど棒読みに聞こえ、名優も外国語では形無しと見えた。同じく日本語で演じた「シルク」の方が彼の持ち味が出ているように感じた。
ただ特筆すべきは、歩き方や仕草。実際存命の呉本人と3ヶ月一緒に生活して得た、細かな立ち居振る舞いも、30代の呉を知っている彼の友人が、そっくり、と驚いたという。だがその分日本語にももう少し神経を使って欲しかった。また14歳から50代位まで、ふけメイクのない同じ顔というのにも、違和感を覚えてしまう。
一方日本の俳優人は及第点。江本明、松阪慶子などのベテラン勢が、意地を見せている。
深い孤独、華人として日中戦争で板ばさみになる思い、事故や病気での痛み、などが全く伝わってこないのが、非常に残念なのだが、どっぷりと昭和時代の様式美に浸るのもいい。上海国際映画祭、最優秀作品受賞、中国107分。
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HN:
hkny Emi Ueyama
性別:
女性
自己紹介:
ニューヨークはチャイナタウンで、最新DVDを仕入れる日々。
ウォン・カーウァイマニア。その他注目しているのは、イー・トンシン、ジョニー・トーらの香港にこだわり続ける監督達。
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