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ニューヨークのチャイナタウンは、香港、中国本土、台湾と時差なし。ここでは最新の映画タイトルのDVDが手に入ります。映画情報をいち早くお届けします。
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すごい作品だ。思わず台湾映画バンザイと叫んでしまうほど。もしかしたら0年代のベスト1かもしれない。それほどこの作品を手放しで褒め称えたくなる。こんな気持ちになったのは他にも大勢いるようで、2009年台湾金馬獎では最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀オリジナル脚本賞、2009年度台湾傑出映画など5部門を受賞。アカデミー賞外国語映画賞の台湾代表にも選ばれた。

 台湾南部、高雄の港で暮らす武雄と7歳の娘・妹仔。武雄は潜水工員で、妹仔は魚釣りを手伝いながら、貧しいが肩を寄せ合って生きてきた。だが妹仔の小学校入学に際し、武雄は役所から妹仔は出奔したまま行方のわからない母親の方の籍に入っていて、保護者としての資格がないと聞かされる。小学校時代の同級生を頼り2人は台北へ向かうものの、法律やさまざまな制度が壁となって立ちはだかり、とうとう自殺騒ぎを起こしてしまう。

全編白黒の画面、ドキュメンタリー風に撮られた映像は美しく、悲しい。主人公の武雄は不器用で社会の底辺にいる。まじめに働くが、欲張りな雇い主に詐取されたり、大怪我をしたりもする。娘を懸命に愛し守ろうとするが、役所にたらいまわしにされてしまい、追い詰められて、不注意から警察に逮捕されもする。だんだん深みはまり、そのまま抜け出せない主人公が切ない。経済的に躍進している台湾だが、格差社会はやはり深刻で、弱者にとって制度に大きな問題があるようだ。それを声高に叫ぶでもなく、じっくりと見せる。

へたをしたら、世間に忘れ去られてしまいそうな、地味な作品だ。スターもいない、レオン・ダイは著名な俳優だが、初監督だ。人間の一番必要なものはなんだろうか、というメッセージが強烈に込められていて、感動が止まらない。幸せや人を思う気持ちは、お金でもなく、犠牲もなく、側にさえいられたらと願うこと。とにかくこんなに素晴らしい映画に出会うのは、今の時代簡単ではない。台湾は、やっぱりすごい。




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独特な映像文化を持つ台湾。リアリズムを追求し、香港や中国などの中華圏、他のアジア諸国とは全く違作り方で、必ずしも起承転結や、強いストーリーがあるわけではない。どちらかといえば、ヨーロッパの映画に近く、淡々と始まり、淡々と終る。芸術性が重視され、娯楽性は二の次という事が多い。だがこの作品は、見事に芸術性と娯楽性を融合させ、台湾映画の次の方向性を決める、指標となるかもしれない。

母の日の夕食の約束、妻に帰宅途中ケーキを買うため、店の前に車を止めたチェン(チャン・チェン)戻ると、真横に黒塗りのベンツが横付けされていて、自分の車が出せない状態になっていた。隣のビルの床屋でベンツの持ち主を尋ねると、3階の住人かもしれないという。3階のアパートに行ってみると、老夫婦と孫の3人暮らしの家族が住んでいた。盲目のおばあさんに息子と間違えられ、夕食を一緒にとるはめになり、戻ってようやく家に帰れると電話をした瞬間、買ってきたケーキをお尻で潰してしまう。汚れたデニムを洗う為に、再び床屋に寄り、車に戻るとまた2重駐車されていた。

とにかく物事が思う通り進まない。複数の人物のそれぞれのストーリーが、ひとつひとつ解明されていく。3階の息子の安否、4階の売春組織の秘密、チャン夫婦の夕食の理由、それらが複雑に絡みながら、やがて全てひとつにまとまっていく。次から次へと起こる事件の語りは、スピード感があり、アーティスティックな映像と合い間って、意外にあっさりと観れる。CMで鍛えたチョン監督のリズム感が、それを可能にしているのは、見事な手腕といえる。

映像はスタイリッシュ。モダンアートのインスタレーションの様な、前衛的なシーンが挟み込まれていたりする。ネクスト・ムーブメントの香りが濃厚だ。



フランシス・ンのエンジンが全開だ。このところ、コンスタントに年間4本づつ映画に出演しているが、どの作品でも鮮烈な印象を残し、手を抜かない。はまり役という言葉が必要ないくらいで、弁護士でもチンピラでも空手のマスターでも、髪型や声色を変えても、本人の色は決して消える事が無い、稀有な俳優である。「钮扣人」は実験的な語り口を持った作品だが、特別な世界観を持っている。それに完全に沿いながらも、独自の絵を描いている。しかもマンダリンでだ。最近のフランシス・ンは褒める事しか出来ない。

ウェイ(フランシス・ン)は組織お抱えの掃除屋。組員の犯した殺人の後始末をするのが仕事だ。近頃、若手の幹部の猟奇殺人の片付けをさせられる事が多い。直接手を下さないウェイだが、証拠を完全に隠滅する事によって、複数の殺人を誘発する結果を作っている。ある日仕事を一人締めしようと画策するパートナーのドクター(レオン・ダイ)によって頭を殴られ、一部記憶を無くして行く。そんなウェイを心配した組織の大ボスは、新入りユィにウェイの見習いになるように頼むのだが。

組織の掃除屋という視点が面白く、死体の内臓を売り飛ばす設定も独創的だ。台湾人監督のチェ・レンハオは、香港映画とは全く違う、芸術性の高い作品に仕上げようとしたようだ。台湾映画はエドワード・ヤンやホウ・シャオセンに代表されるように、時間軸の使い方が独特で、エンターテイメント性が高いとは言いがたい。本作品も起承転結が無く、記憶を亡くしやすいウェイの視点で、過去と現実がごちゃ混ぜになり、映画の終わりも現実だったのか、そうでなかったのか、あやふやなままで、わかりにくい。素晴らしい発想を持った作品だけに、違う手法で観たかったと思わざるを得ない。

もちろん、映像は味があり、音楽もいい。ウェイと恋人の娼婦(テリー・クワン)の二人の絡みは、暖かく切ない。この二人の存在は確実に作品の重みを増している。
観て損はないが、後味がすっきりしない。従来の香港映画に飽きてしまっている人には、いいかもしれない。


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プロフィール
HN:
hkny Emi Ueyama
性別:
女性
自己紹介:
ニューヨークはチャイナタウンで、最新DVDを仕入れる日々。
ウォン・カーウァイマニア。その他注目しているのは、イー・トンシン、ジョニー・トーらの香港にこだわり続ける監督達。
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