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ニューヨークのチャイナタウンは、香港、中国本土、台湾と時差なし。ここでは最新の映画タイトルのDVDが手に入ります。映画情報をいち早くお届けします。
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「痛み」イー・トンシン監督の社会派シリーズで、本当に伝えたいのは「痛み」ではないだろうか。肉体だけでも、精神だけでもない。社会の底辺でもがき苦しむ人々に焦点をあて始めたイー。「ワンナイト・イン・モンコック」以降、今までの感傷的恋愛映画から、180度シフトを切り替えた。彼に何かがあったのかはわからない。だが香港での製作にこだわり続け、比類なき才能を見せ付けられる我々は、街の片隅にうずくまり生活している人々の声を拾う彼の仕事を追うしかない。

麻薬捜査官のニック(ダニエル・ウー)は、香港ヘロイン市場の70%を掌握している売人・クワン(アンディ・ラウ)の組織に潜入して8年が経つ。の右腕としてすっかり信頼されているニックは、虎視眈々と組織壊滅の機を窺っていた。一方、50歳を過ぎ、糖尿病によって肝臓を患っているクワンは、ニックにビジネスを引き継ぎ、引退しようと考えている。そんなある日、ニックは向かいに住む幼い娘とその母親のフェン(チャン・ジンチュー)と出会う。貧しく、食事も満足にできていない彼女たちの面倒見ているうちに、ニックはフェンが重度のヘロイン中毒者であることを知る。

ヘロインけしを栽培するタイの農民達は詐取され、中毒患者達はそれを手に入れる為に全てを失い、それ以上を搾り取られ、死を待つしかない。容易に止められないから、ぐるぐると地獄と天国をさまよい続けるしかないのか。どうしようもない社会の最底辺でさまよう人々を利用して、巨万の富が動くから、麻薬は形を変えても、永久に無くならない、そんなメッセージがこめられているように感じた。

この作品の見所は、なんと言ってもアンディ・ラウの憑依したかの演技だ。いつものアイドル然としたかっこよさを捨て去り、下品で、病気で、歳老いた、麻薬の売人を大熱演。白髪頭で糖尿病患者の彼がトイレで用を足すシーンなど、目を背けたくなるくらい痛々しく、なりふりかまわない役者魂に脱帽する。コンサートで腰をふりふりスパンコールの衣装を着て踊る彼の姿からは想像出来ない。ちょっと猫背でせこせこ歩く姿に、ファンもショックを受けただろう。この作品で、アンディは香港電影金像奨で最優秀助演賞を獲得した。

もちろんイー監督作品には欠かせないダニエル・ウーも力演だし、チャン・ジンチューは麻薬常習者にしか見えず、その夫役のルイス・クーにいたっては、誰だかわからない程役を作りこんでいる。夫婦とも怖すぎるほどリアルで体当たりだ。アニタ・ムイも肝っ玉母さんが似合っていた。スター達がオーラを封印して全力投球していて、彼らの仕事振りを見るだけでも十分価値のある作品である。

香港電影金像奨に最多15部門でノミネートされたこの作品、興行的には大成功とは言えなかったが、社会的にも意義のある作品で、日本で劇場公開されなかったのは、残念。中国の大資本におもねる事も無く、意思を曲げる事無いイー監督には、最大限の敬意を払いたい。
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hkny Emi Ueyama
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女性
自己紹介:
ニューヨークはチャイナタウンで、最新DVDを仕入れる日々。
ウォン・カーウァイマニア。その他注目しているのは、イー・トンシン、ジョニー・トーらの香港にこだわり続ける監督達。
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